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【story15】シェアハウスと本屋と



R65不動産 代表取締役 山本遼さん 32

千住暮らし【ストーリー1】写真1



荒川と隅田川に囲まれた小さな千住のまちに、今、ちょっとユニークなシェアハウスが増殖(?)しているのをご存知だろうか。千住仲町の「ショウガナイズ北千住」、千住柳町の「チョイふるハウス北千住」、千住河原町の「日日nichinichi」、千住旭町の「アサヒ荘」、そして誕生したばかりの千住橋戸町の「メゾンまばたき」。


名前を聞くだけでも何だか好奇心をそそられるが、その仕掛け人が、山本遼さんだ。千住には18の町名があるが、まるでその一つひとつを塗りつぶしていくかのように、勢力を拡大中だ。


家賃がおさえられることもあり、主に20代が暮らすシェアハウスだが、一方で山本さんが代表取締役を務める本業の「R65不動産」は、主に65歳以上の賃貸物件を仲介する。そのギャップがまた面白い。


200本電話をかけた高齢者の部屋探し


R65不動産は、山本さんが26歳のとき立ち上げた会社だ。

前職の不動産会社で、高齢の方の賃貸契約を断っている状況を目の当たりにしたことがきっかけだった。4か所で断られたと来店された80代の女性に対応したこともある。何とかしたいと思い、かけた電話は200本以上。多くの不動産会社や大家は、孤独死や認知症、家賃の不払いなどを懸念して、高齢者に部屋を貸したがらない。それを知って衝撃を受けた。「自分が高齢になったときに、そんな狭い選択肢しかない社会で生きたくない」。そう思った。


おばあちゃんっ子だった山本さんにとって高齢者は、遠い存在とは思えなかった。

「祖母は79歳で亡くなったんですが、薬局をやっていて、亡くなる2年前まで店に立っていたんです。薬をひとつ売るにもしっかり話を聞いて接客する、温かい人でした。博学で聡明でしたが、良い意味でそんなことを感じさせない。ごく自然に、一生働く、そんな姿がカッコよかったんです。自分もそんな風に歳を重ねたいなと思っています」。


今も、ご高齢の方と話していると、年齢が違うだけで、考えていることは自分とそう変わらないなあと思う。「ご高齢の方の力になりたい」。そう思い、いくつかのエリアでは自治体とも手を組んで、高齢者が心地よく暮らせるまちづくりに取り組み始めている。「せっかく千住で事業をやっているので、次は足立区でやりたいなって思ってるんです」。


夫婦でも家族でもないから寛容になれる


ライフワークとして高齢者向け住宅に取り組む一方で山本さんは、千住で5軒、都内で数えれば15軒のシェアハウスを運営する。

最初は、独立して間もないタイミングで、お世話になっている大家さんから「シェアハウスをやりたい」と、ごく個人的に頼まれたのがきっかけだった。世田谷区の松陰神社前の物件で、女性専用のシェアハウスをはじめた。


「めちゃくちゃ大変だったっすね」。虫が出たと呼び出されたり、ここが古くなったから変えて欲しいとか、挙げ句の果てには隣の目覚ましの音がうるさいから何とかしてくれとか、とにかく要望に対応するのにひと苦労した。「シェアハウスはもう絶対やらない」。そう思ったときに、三軒茶屋の15部屋ある物件でシェアハウスをやらないかと声がかかったのである。


山本さんが尻込みしていたところ、友達が「一緒にやろうよ」と声をかけてくれた。その誘いに乗り、友達3人で、今度は住みながら、始めたという。そうしたら「そこがすごく面白かったんです」。メールやラインでは問題が大きくなりがちだが、顔を見て話すと簡単に解決することに気づいた。結局、住民との「距離」の問題だったんだなと思った。松陰神社前の物件では、自分は大家側にいた。大家&自分VS入居者という対立構造が、三軒茶屋では、自分も入居者側となり、入居者と友達のような関係になった。


「全然違うタイプの人が住んでいるし、もちろんトラブルも喧嘩もあります」。だが、1対1だと逃げ場がなくなるが、複数だとそれが緩和される。「夫婦でもない、家族でもないので、逆に寛容になりやすいと思います」。


1つの家を1つの家族で使うのが普通だが、1部屋ごとに、常識も違う、生活時間帯も違うバラバラな人が、1つの家で暮らす。「昔の長屋みたいで、面白いなって」。家族ではないが家族に似ている他人と暮らすシェアハウス。その魅力にはまり、あっという間に15軒まで増えた。


「シェアハウスの運営は自分に向いてるなあと思っています」。

お金の授受があるけれども友達。家賃は必要経費で、どこにいても払わなくてはいけないものだから、ごく自然な友達関係のまま一緒に暮らせるという。「だから、そこで無理に儲けようとは思わないんです」。


新陳代謝するシェアハウス


ところで、山本さんの15軒のシェアハウスのうち5軒は千住にある。

2019年に、R65不動産サイトを見た大家さんから、千住に古い物件があると話があった。北千住エリアの物件は初めてだったが、見に来てみて、家の雰囲気、まちや商店街の雰囲気を「すごい面白いなあ」と思った。大きすぎず、ここならやれると思った。山本さんの10軒目のシェアハウスが、千住に誕生した。


ここでは、これまでにない試みにチャレンジした。約3年間、9軒のシェアハウスを運営し、100人近い入居者とつきあってみて感じていた課題があったからだ。自分はいいコミュニティをつくりたいと思っているのに、家賃が安いという理由だけで長くいすわる入居者がいることに気がついたのだ。本人も、そこが好きだから住んでいるわけではないのでそれが態度に出る。そういう人がいるとシェアハウスの空気は悪くなる。


そこで、半年ごとに家賃が5000円上がるシェアハウス、新陳代謝するシェアハウスを思いついた。名前は「ショウガナイズ北千住」。新陳代謝をよくする「生姜」+「組織する」を意味する「オーガナイズ」。全て込みで36000円からスタートする。

おおむね半年で出ていくシェアハウスには、住人、その友人含め、面白い人たちが集まってきた。今も仲がいいほぼ同年齢の石村大輔さん(Senju Motomachi Souko運営/【story7】地域とつながる建築家)と高木正太郎さん(KiKi北千住店主)、それに栗野泰成さん(チョイふる代表理事)など、今、千住で活躍する若手の名前が上がる。青年海外協力隊を経験した栗野さんは、本業のかたわら、国際協力畑の人が多く住むシェアハウス「チョイふるハウス北千住」を、山本オーナーのもと、立ち上げた。「栗野くんがやりたいと言ったので」、山本さんにとって千住で2軒目のシェアハウスは翌年誕生。また、同じく元住人で美大生の星野蒼天さんは、山本さんの力を借りて千住旭町の空き家をリノベーションしてギャラリーPUNIOを始めた行動派だ。



個性が違う5つのシェアハウス


その後、足立区の空き家利活用事業のコンペに手を上げて勝ち取った物件で、高木さん夫妻が管理人となって営む「日日nichinichi」がスタート。築90年の古民家をリノベーションしたDIY可能なシェアハウスは、味噌を仕込んだり、近くにある足立市場で新鮮な魚介類を買ってきて料理するなど暮らしを楽しむシェアハウス。

このころから、山本さんの物件探しは、今面白いと感じている「千住」に集中し始める。「大きい物件だとその中で完結してしまってシェアハウスが村になり村長が強すぎる問題が起こる。30人が住む大きなシェアハウスより、6人が住むシェアハウスが同じエリア内に5軒あるほうが面白い」。山本さんはその面白さを「家が拡張する感覚」「街の中に街をつくる」をいった独特の表現をしていてその発想の面白さにときめく。詳しくは山本さんのnoteを見て欲しい。


しかも山本さんの千住の5軒のシェアハウスはそれぞれかなり個性が違う。4軒目の「アサヒ荘」はクリエイターが多く住む。

そして、誕生したばかりの5軒目「メゾンまばたき」は、屋上が気持ち良すぎる隅田川リバーサイドのシェアハウス。まだ住人が少ないのでどんな色になっていくのかこれから楽しみだ。今、山本さんは主にここを拠点に暮らしている。「風が抜ける感じや、川がきらきら光るのが眺められるのがいい。屋上があってのんびりしてるのもすごく気に入っているので、しばらくはここにいると思います」。


山本さんに「今後やりたいこと」を聞いたとき「シェアハウスの住人がやりたいことの応援」と即答で返ってきたのだが、5つのシェアハウスの色が違うのは、山本さんのそのスタンスのせいだろうと思う。「自分はあんまりこだわりがなくて、住人みんなが楽しそうなら自分も楽しい」。山本さんのシェアハウスに住む若い人たちに何人も会ったが、みんな自由で楽しそうだ。前述の栗野さんや星野さんのように、山本さんの力を借りながら夢の実現に一歩踏み出していく若者も多い。


「15棟のシェアハウスを、全部ボクがやるとつまんないと思うんです。それぞれの管理人の個性で運営し、いろんな種類のシェアハウスがあるのが面白い。独裁国家を作りたいわけじゃないので」。というわけで、あんまり儲からないシェアハウス事業にのめりこんでいる。「みんなでやることを大事にすると、空室が出たり、赤字が出たりするんですけど(笑)」。

山本さんの暮らしは、そのつど空室のある自分のシェアハウスを1ヶ月単位で渡り歩くシェアハウスホッパー。全国を渡り歩くアドレスホッパーが近年増えているというが、都内のシェアハウスを転々とする人は多くないと思うと山本さん。家具も家電もキッチン用品もそれぞれあるので、自分の持ち物は服20セットくらいだけなのだそうだ。15棟を見渡しながら、今自分がいるべき場所にフットワーク軽く移動する。



迷ったら本屋、のち喫茶店


シェアハウス立ち上げ時は住みながらスタートするため、千住に5軒を有する山本さんの千住滞在日数は多い。山本さんの日常が千住のまちのなかにある。ふだんの出没エリアに同行させてもらった。

「ボク、迷ったらその足で本屋さんに行くんですよ」。

部下との関係とか、運営しているシェアハウスの住民同士のトラブルとか、自分が年齢を重ねるにつれ広がっていくシェアハウスの住人との年齢差・・・悩むことがあると解決策を探しに本屋に行くと言う。

1日12時間以上スマホやパソコンを見ている生活。答えがはっきりしているものはネットで探すが、答えが漠然としているものは本屋か、友達に相談するという。悩むと本屋を「散歩」して答えを探す。今の千住では品揃えの充実しているブックファーストルミネ北千住店。


「週に1冊くらい本は読みます。買った日に喫茶店で半分読む。本はコスパがいいですね。1000円で、半分読むと悩みは消えてます」。悩んでるこいとはたいがい、頭の中でぐるぐる回ってることや、どうでもいいことが多いので、そういうときはまず「本屋散歩」だという。


「やってる仕事の種類が多くて煩雑だし、儲からない仕事の方が多いし。考えてると煮詰まってしまうので、そんなときは歩きます」。目の前に課題があるとやってしまうので、いったん離れて歩く。


千住でよく行く喫茶店、カフェは、シャンティ、BUoYカフェ、スロージェットコーヒー。老舗喫茶店のシャンティは本を読む場所。テーブルが狭くて低いのが、本を読むのにぴったり。「ここで仕事している人は見たことありません」。一方、BUoYカフェは机が広くてどっしりしているので、本も読むが「書き物をするのにいい」。人と会ってとったメモを整理するときにはノートを持ってBUoYカフェに行く。ただし比較的空いている平日限定だという。スロージェットコーヒーでは、パソコン持参で仕事をすることが多い。「スロージェットでは1人で仕事している人が多いからかな」。店によって異なる特徴を、自身のタイミングに合わせて使い分ける。「1週間のうち3時間くらい、カフェで考える時間を必ずとってますね」。



頭のゴミをとりに。路地と土手と銭湯と


本屋の散歩のほかに、路地を散歩するのも好きだ。かつて宿場町だった千住は、旧日光街道に面する間口で税金が決められていたため、間口が狭く奥に細長い敷地の家が多かった。その間を縫う細い路地が今もたくさんあって、地図を眺めると旧街道を背骨とした、魚の骨のようにも見える。


今山本さんが主に暮らすシェハウス「メゾンまばたき」のある千住橋戸町にも「立ち止まるのが申し訳ないような」細い路地が多い。だから立ち止まらず、ゆっくり歩く。路地を歩いて空き家を探すのも楽しい。千住の路地裏には空き家がたくさんあって、可能性を感じるという。


荒川土手が近いアサヒ荘に暮らしていたときは、夕方の散歩は土手にも出かけた。ビールや焼き鳥片手に行くこともあるが、たいがいは、ふらりと出かけてただ歩く。「散歩は、頭のゴミを取りに行くような感じですね。思考がぐるぐる回ってしまう、だったら散歩(笑)」。

同じように「思考のゴミを落としに」銭湯にも行く。千住は、ほんの2キロ四方のまちだが、この小さなエリアの中に銭湯が7軒ある。1年前には8軒あったが、キングオブ銭湯と呼ばれた大黒湯が昨年6月に閉店し、現在7軒。「大黒湯が閉店して残念です」。

以前は、大黒湯に行くことが多かったが、今は、露天風呂と水風呂がある大和湯が多い。キングオブ縁側と呼ばれるタカラ湯や、ニコニコ湯、美登利湯にも行く。「梅の湯はちょっと熱くて(汗)」。「平日の夕方、ちょっと時間ができたときに1人で、ふらっと入りに行きます」。混むのが苦手なので、土日でなく平日の空いている時間帯に行くという。千住はよく、銭湯のまちと言われるが、近所にあるメリットを活かして、日常使いでフル活用。


ひとりで飲む

飲み横ほか飲食店が充実していることも、山本さんが千住を気に入っているポイントだ。1軒目のショウガナイズ北千住を立ち上げたころは、同世代で親しい前述・高木さんは赤ちゃんが生まれる前だったし、石村さんも独身だった。「あの頃は泥のように飲み倒してました(笑)」。美味しくてコスパの良い「らむすけ」や「かつを」、ちょっとディープな「森栄」など、大抵3~4軒ハシゴした。


今は近くの足立市場で昼ごはんを食べるほか、ひとりで飲むことも多い。

山本さんが好きだと言う、北千住駅西口から伸びるときわ通り、通称飲み横は、戦後の風情を残す飲み屋街だが、狭い間口の小さな店がぎっしり立ち並び、通りから脇道にそれてもまた細い路地にぎっしり飲み屋が連なる、昭和ゾーン。大衆酒場や昔ながらの小料理屋もあるが、それらが退去後、若い世代がそのまま借りてリノベーションした面白い店も多い。ひとりでも違和感なく飲めるのがいいと言う。クラフトビールの「びあマ」や、路地裏にできた「タチアタル」、そして飲み横の代名詞のようにもなっている大衆酒場の「千住の永見」など。


年配男性のひとり客が多い永見は「まだちょっと緊張しますが」と言いながら、テーブル席中心の2階でなく、ひとり客がカウンターなどで飲む1階で、たまに飲むそう。


山本さんに同行して千住のまちを歩きながら話を聞いてみると、さまざまな場所に出没するが、単独行動が多いことに気づく。「家に帰ると誰かいるので、まちで行動するときはひとりが多いですね。誘われたらもちろん一緒に行きますが、家の人と外で飲むことはあまりない」。とはいえほぼ2キロ四方の千住で5軒もシェアハウスを運営していると、知っている人に会う確率は高まる。取材の日も、よく行くという「マメココロ」の前で、前述・もとショウガナイズ住人でPUNIOを運営する星野さんに会ったが、山本さん、実にうれしそうだった。



本屋をはじめる


実は山本さん、千住で事業展開を始めたころから、シェアハウスの中だけにとどまるのでなく「まちに出る人材を増やしたい」と考えるようになった。R65不動産を仕事にしてみて、地域との関わりがないのは「危うい」と考えるようになったからだ。だから今は町内会にも入っている。若い女性のひとり暮らしなどでは、町内会に入ってひとりで関わるのは「ちょっと重い」。でもシェアハウスにいると、無理なくご近所と関われる。まちで会ったら挨拶もできる。


また、シェアハウスは年齢が上がると出ていく人が多いが、出た後もつながっていたり、居場所がある関係が続くといいとも思う。実際、おおむね半年ごとに住人が変わるショウガナイズ北千住では、住人&元住人LINEグループはどんどんふくれ上がっているという。「出ていった住人の、新しい町内会というか、公民館的役割ができるといいなって考えていて、これ、最近のボクのテーマなんです」。


2019年に、日替わりオーナーがいるちょっと変わった「スナックニューショーイン」を始めたのも、シェアハウスに住まなくても人がつながれる場をつくりたいという思いがあったからだ。しかし、コロナ禍がはじまり、スナックに集まれなくなり、気軽に人と会えなくなって、次に思いついたのが「本でつながる」という方法。

思い立ったら行動が早い山本さん、ショウガナイズ北千住にほど近い、元雀荘だった一軒家を借り、現在「本屋」を準備中だ。「シェアハウスって古本が出るんですよ。退却のときに本を残していったりするので」。そんなことも、本屋を思いついた一因だそうだ。


山本さんが読む本は、仕事の悩みを解決してくれる本などビジネス書が多いが、いいなと思っている人に勧められた本は読みたくなるという。だからつくりたいのは、人のオススメの本が並ぶ本屋。棚ごとのオーナーに月数千円で棚を貸し、リコメンドの本を並べてもらう、名前は「共同書店編境」とした。「図書館や本屋は飲食できないのが残念。ここでは、マメココロでテイクアウトしてきたコーヒーを飲みながら、本を読みながら、時間を過ごしてもいい」。


「ときどき『無欲』だねって言われるのですが『強欲』です(笑)。一緒に遊べる友達が欲しいとか、スナックをつくりたいとか、本屋が欲しいとか。ただ、人と少し違うのは、お金を使って何かを買って欲を満たすのではなく、仕事の中で欲を満たすことができると思っていること。なので、お金を稼ぐことにはあまり興味がありません」。


今のこの生活をこのまま続けたいから


「ごはんも美味しいし、路線も便利だし、利便性に比べて家賃も安いし、いいことはたくさんあるけど、千住で一番好きなのは『人』です。千住の人は年齢問わず寛容です。シェアハウスなんて言うと世田谷では眉をしかめられたりするけど、千住ではシンプルに応援される。アーティストも多く、よくわからない活動も、賞賛はされなくても否定はされない」。


また、世田谷区や目黒区では「まちに対する愛着がなく、消費者として関わるだけ。ブランドがあるから住みたいだけで、まちに負けないようにがんばっているイメージ。でも足立区ではそれがない。年上の人たちはみんな、足立、千住が好きなので、ボクらが千住に住んでいると言うとそれだけで喜んでくれる。ブランドで住むのでなく、このまちが好きでこのまちを良くしたいと思う人がたくさん住むまちのほうが、エネルギーもあるし活気もある。足立区はのびしろしかないと思います」。


今、千住に惚れ込んでいる山本さんは、こんなふうに話す。「今までは建物に目が向いていて、土地にはそんなに興味がなかった。初めて、まちで何かやりたいと思った場所が『千住』ですね」。

半年くらい前に、山本さんから「千住浪漫シティ」という構想を聞いた。1マイル圏内(徒歩20分圏内)に楽しいまちをつくりたいという。2025年の千住には、シェアハウス10棟、住民50人、友達の運営する拠点(飲食店・倉庫・空き地)150箇所、関係人口1,000人。「めっちゃ盛り上がった場合」この3倍想定。それがアイデアにとどまらず、静かに一歩一歩、現実のものとなり始めていることにワクワクする。

このところ、生まれ故郷の広島県で高齢者の居住支援体制をつくるために自治体や不動産業者と手を組みながら奔走する山本さんだが、出張から千住橋戸町の「メゾンまばたき」に戻るとほっとするという。


「今、自分が幸せだなあって思うんです。特別なことは何もないけど、1人でぶらぶらまちを歩いて、店に入って、常連さんとしゃべって帰ってくる。家に帰ったら誰かがいて。何となくいいなと思うものがたくさん、まちの中にも家にもあって、その中で自分が今選びたいものを選んでいる生活。うまく説明できないけど、無意識のレベルで楽しく生きてる。R65でやりたいことって、今のこの生活をこのまま続けたいってことだけなんです」。







取材:2022年4月23日、5月15日

写真:伊澤直久

文 :舟橋左斗子


 

文中に登場したお店など



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